湘南というとサーフィン、マリンスポーツ、オシャレな海辺の街といったイメージが先行しがちですが、実は子育てをしやすい環境が整った街がいくつもあることをご存じでしょうか。
温暖で自然豊かな風土は、子どもをのびのびと育てるのに適しています。そんな湘南のなかでも、特に子育てにおすすめのエリアを厳選し、そのエリアに家族で暮らすメリットとデメリットをご紹介します。

今回選んだのは藤沢エリア、平塚エリア、葉山エリアの3カ所です。行政の子育て支援はどのくらいあるのか、保育園の待機児童数は多いのか少ないのか、街の雰囲気や環境はどうか、治安は良いのか悪いのか、子どもの遊び場は充実しているのか、都心へのアクセスは便利かなど、子育てにおいて気になるポイントをエリアごとに詳しくご紹介します。

子育てしやすい環境ってどんな環境?

子どもを健やかに育てていくためには、良い地域環境や行政の支援が欠かせません。地域環境としては、病院、保育園、幼稚園、学校、公園、図書館などといった必要な施設が十分に揃っていること、治安や騒音などの心配がないこと、地域の人間関係が良いことなどが挙げられます。
ストレスをためずに子育てをしていくためには、買物事情や通勤先までのアクセス事情が良いことも重要です。行政が子育て支援に積極的に取り組んでいるかどうかは、小児医療費の助成状況や保育園の待機児童数の推移などを調べると判断の目安になります。

すべてをパーフェクトに満たしてくれるエリアを探すことは至難の業ですので、「自分が譲れない・こだわりたいポイントはどこなのか」を引っ越し先探しの前にあらかじめ考えておきましょう。

子育ておすすめエリア1:藤沢

藤沢・辻堂・湘南台・鵠沼海岸など子育て環境のいい街をいくつも擁しているのが、2014年に株式会社学研パブリッシングが発表した「主婦が幸せに暮らせる街ランキング」で1位を獲得した藤沢市です。その藤沢市のなかでも特に都心へのアクセスが便利で、都会さと自然の豊かさとのバランスが良い藤沢エリアをご紹介します。

藤沢ってどんなところ?

藤沢市の主要駅である藤沢駅周辺のエリアで、鵠沼海岸や江ノ島など湘南の海への玄関口としての役割も果たしています。北口・南口ともに栄えていて、デパートや家電量販店もあり日常のショッピングには困りません。辻堂にある湘南エリア最大のショッピングセンター「テラスモール湘南」などへのアクセスも便利です。
藤沢駅はJR湘南新宿ライン、JR東海道本線、小田急電鉄、江ノ島電鉄が利用できます。JR東海道本線で東京まで47分、JR湘南新宿ライン快速で新宿まで50分、小田急線快速急行で58分と都心へのアクセスが良好です。リスやカワセミなどの姿を見ることもできる緑深い「森林公園」が駅からの徒歩圏内にあり、海へも自転車で気軽に行ける距離にあるなど、豊かな自然環境で子どもを育てることができます。

SUUMOの「JR東海道本線の家賃相場情報」によると、藤沢駅エリアはファミリーで住める2LDK・3K・3DKの間取りのマンションの家賃相場が10万円弱で、都内へのアクセスの良さのわりにお値打ち相場となっています。

藤沢で子育てをするメリット

湘南の海にいつでも子どもと遊びに行くことができ、なおかつ潮風による塩害などはほぼ受けずにすむ絶妙な海との距離感が藤沢駅周辺エリアの良さです。
藤沢市は子育て支援が充実していて小児医療費の助成も手厚く、所得に関係なく通院・入院の医療費が小学6年制まで控除、所得制限にかからなければ中学卒業まで控除されます。健診や予防接種など保険が適用されないものは助成対象外ですが、保険診療の自己負担分が無料になる期間が長いというのは子どもを育てていく上で嬉しいポイントです。

子育て関連の施設も多く、藤沢市内に子育て支援センターが4カ所、つどいの広場が4カ所、地域子どもの家が17カ所、児童館が5カ所、青少年会館が2カ所あります。加えて、成長曲線や健診・予防接種のスケジュール管理などができる「子育てアプリふじさわ」が無料で利用可能です。このアプリを利用すると、藤沢市から子育てイベントなどのお知らせも届きます。
1歳6カ月児健診の時に、おすすめの絵本1冊とブックリストなどが入ったブック・スタートパックが配られる「ブックファースト事業」など、子どもと本とをつなげる取り組みも盛んです。

藤沢で子育てをするデメリット

藤沢駅周辺エリアには、海の近くならでは、ファミリーに人気の街ならではのデメリットもあります。

待機児童の多さ

一番気になるのは待機児童の多さです。藤沢市は子育て環境の良さからファミリー世帯の転入超過が続いていて、希望しても認可保育所に入れない待機児童が多数います。藤沢市が発表した「待機児童の状況と今後の取組(2019年5月30日記者会見・案件2)」によると、平成31年4月1日時点の藤沢市全体の待機児童数は164人でした。ただし、藤沢市は平成30年度に認可保育所の新設などで290人の定員拡大を図るなど、継続的に改善を行っています。令和2年4月に向けて合計592人の定員拡大を見込んでいるとも発表していますので、今後状況は良くなっていくはずです。

津波や浸水などの災害

藤沢市南部は海と隣接しているため、どうしても津波や浸水のリスクがあります。藤沢市は作成した津波ハザードマップや浸水想定図をもとに、各地に津波避難ビルを指定しています。いざという時のために、自宅付近や行動範囲内にある津波避難ビルを確認しておき、避難訓練に積極的に参加するなど日頃からの備えが必要です。

子育ておすすめエリア2:平塚

平塚市では「湘南で子育てするなら平塚市」と謳い、市をあげて子育てをしやすい環境づくりに取り組んでいます。平成27年、28年には2年連続で待機児童数ゼロを達成しました。子育て世代の転入が増えたことで現在は待機児童が発生していますが、海と山に囲まれた子育ておすすめエリアとして注目を集めています。

平塚ってどんなところ?

相模湾に面した約3.8kmの海岸線から西北に扇型に広がっている、海と山に囲まれた自然豊かな街です。豪華な七夕飾りが数多たなびく「湘南ひらつか七夕まつり」が有名で、市内外から毎年多くの人が訪れます。「ららぽーと湘南平塚」や地元に密着した33の商店街などがあり、買物をする場所には事欠きません。
平塚駅はJR東海道線本線とJR湘南新宿ラインが利用でき、東京まで58分、新宿まで60分で行くことができます。平塚始発となる電車も多いため、始発電車を選んで乗れば席に座って通勤をすることも可能です。駅の北と南で雰囲気が変わり、海側である南側のほうが落ち着いているため子育てにはおすすめのエリアとなっています。

SUUMOの「JR東海道本線の家賃相場情報」によると、平塚駅エリアはファミリーで住める2LDK・3K・3DKの間取りのマンションの家賃相場は8万円弱です。藤沢に比べて2万円近くも安い相場となっています。

平塚で子育てをするメリット

ここでは、平塚で子育てをするメリットをご紹介します。

子育て応援が充実

市が子育て応援を掲げているため、「平塚市子ども・子育て支援事業計画」に沿って各種支援が充実しているところが平塚で子育てをする一番のメリットです。小児医療費の助成も手厚く、0歳から中学3年生まで医療費が助成されます。今までは小学生以上の子どもについては保護者の所得制限がありましたが、令和2年1月1日から所得制限が撤廃される予定です。
未熟児に対しては、医師が治療の必要を認めた場合に医療費を助成してもらえる養育医療給付などの制度もあります。

「ドリームパスポート」の発行

スポーツ好きの子どもに喜ばれているのが、平塚市総合公園が平塚市内在住の小学生に発行している「ドリームパスポート」です。これは「ShonanBMWスタジアム平塚」「バッティングパレス相石スタジアムひらつか」「トッケイセキュリティ平塚総合体育館」で行われる「湘南ベルマーレ」「横浜DeNAベイスターズ」「横浜ビー・コルセアーズ」の試合に、無料で招待してもらえるパスポートです。プロスポーツを観戦するという体験が気軽にできるのも、平塚で子育てをするメリットといえるでしょう。
平塚市総合公園には大型遊具やふれあい動物園などもあって、1日たっぷり遊べる場所となっています。

平塚で子育てをするデメリット

駅の北と南で雰囲気が異なっており、北部は居酒屋なども立ち並ぶ繁華街があって子育てに向いているとはいえません。加えて、治安にも少し不安があります。神奈川県警察が発表した「刑法犯 罪名別 市区町村別 認知件数」の令和元年1から10月までの累月暫定値によると、平塚市の刑法犯総数は1,157件でした。一方、駅より南部の海側地域は、閑静な住宅街で治安も比較的安定しています。

都心までのアクセスは良いのですが、平塚駅ではJRしか利用できないため、ひとたびJRが止まってしまうと通勤や帰宅に大きな影響が出てしまう点もデメリットといえます。

子育ておすすめエリア3:葉山

「閑静なリゾート地」「気品のある大人の街」というイメージのある葉山ですが、葉山町の行政も子育て支援に力をいれていることもあり、近年子育て世帯の転入が増えています。交通の便はさほど良くありませんが、そのぶん治安が良く子育てにおすすめのエリアです。

葉山ってどんなところ?

三浦半島の西部にある葉山町という小さな町で、相模湾に面した海岸線以外は丘陵地が多い自然豊かなエリアです。皇族が静養する葉山御用邸があることでも知られています。海が綺麗で、三ヶ岡山と御用邸に囲まれた一色海岸は「世界の厳選ビーチ100」に選ばれたこともある雰囲気の良いビーチです。
葉山というと高級住宅街のイメージがありますが、「もとまちユニオン葉山店」などの高級系スーパーだけでなく、「そうてつローゼン葉山店」など日常使いできるスーパーもあって安心です。
三浦野菜や地魚などがおいしく、カフェやレストランなど隠れ家感のある個人経営のお店がたくさんあります。毎週日曜日には葉山港で「ハヤマ・マーケット」という朝市が開催されていて、住民や観光客に人気です。

葉山町内には電車の駅がありません。JR横須賀線の逗子駅もしくは京浜急行電鉄新逗子駅からバスを利用することになります。そのため、葉山町では自転車や車などを利用している人が多いようです。

葉山で子育てをするメリット

海と緑に囲まれた穏やかな場所で子どもを育てられることが、葉山で子育てをする一番のメリットです。御用邸があることや電車の駅がないこともあいまって、治安がとても良い地域として知られています。
葉山町では、0歳から中学3年生までの子どもの小児医療費を所得制限なしで助成してくれます。自宅で要介護4.5の高齢者を常時介護している家庭に「家族介護慰労金」が支給されるなど、子育て以外の面でも福祉が充実しています。

加えて、4カ月児健診の時に「ブックスタート」として葉山町の子ども育成課と葉山町立図書館が連携して、絵本のプレゼントや読み聞かせ、わらべ歌の披露をしています。同館では絵本の読み聞かせや紙芝居、手遊び歌などを楽しむ「おはなしかい」も継続的に行っています。

葉山で子育てをするデメリット

電車の駅がなく、都心までのアクセスが不便なことは大きなデメリットです。通勤・通学に電車が欠かせない家庭や、これまで電車移動に慣れている場合はデメリットを感じやすいかもしれません。ただし、駅がないことが葉山の治安や静かな環境を守っていることにもつながっています。

まとめ

湘南には子育てにおすすめのエリアがたくさんあります。それぞれメリットばかりではありませんが、のびのびと子どもを育てるのであれば自然豊かな湘南エリアを検討してみてはいかがでしょうか。
 

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