海と山が織りなす美しい自然と多くの歴史的遺産を有する古都鎌倉は、毎年約2,000万人が訪れる観光地でありながら関東有数の高級住宅街としても知られています。とはいえ、どのエリアを鎌倉の高級住宅街とするのかについては人によって意見がわかれるところです。
今回はなぜ意見がわかれるのか、概ねどの辺りが鎌倉の高級住宅街とされているのか、住むメリット・デメリットなどについてご紹介します。
鎌倉の高級住宅街や古民家への移住を考えるのであれば、デメリットもおさえたうえで鎌倉でのスローライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。

鎌倉ってどんな街なの?

鎌倉は由比ガ浜・材木座・稲村ガ崎などの海辺と、攻めるに難い「天然の要塞」とも称された緑深い山々に抱かれた風光明媚な土地です。鎌倉時代に武家政権の都市として発展したこの街は、鶴岡八幡宮を筆頭に歴史を感じさせるスポットや神社仏閣が数多く存在します。加えて、川端康成や中原中也といった文豪をはじめとした著名人たちがこぞって居住した文化の香り漂う街でもあります。

生しらすや鎌倉野菜など食の面も充実しており、JR横須賀線で東京まで乗り継ぎなしで55分で行くことができるため都心へのアクセスも悪くはありません。年間約2,000万人もの観光客で観光スポットや交通手段は混雑しますが、ひとたび住宅街に足を踏み入れるとそこには喧噪を感じさせないゆったりとした時間が流れています。
単線の江ノ島電鉄(江ノ電)がのんびりと走る、「スローライフ」「ロハス」といった言葉がよく似合う街です。

鎌倉の高級住宅街はどの辺り?

鎌倉市には5つの地域があります。鎌倉駅を中心とする「鎌倉地域」、腰越・七里ガ浜・西鎌倉などを擁する「腰越地域」、鎌倉山などがある「深沢地域」、大船や北鎌倉駅などがある「大船地域」、「玉縄地域」です。鎌倉地域は「旧鎌倉地区」とも呼ばれ、昔ながらの地元住民のなかにはこの鎌倉地域以外は鎌倉とは認めないという人もいます。そのため、どのエリアを鎌倉の高級住宅街とするのかは人によって意見がわかれるのです。
例えば、鎌倉山や西鎌倉は湘南を代表する高級住宅街ですが、鎌倉地域ではないので「あの辺りは高級住宅街とはいっても『鎌倉の高級住宅街』ではないね」と除外されてしまうこともあるようです。ここでは、誰からも概ね「鎌倉の高級住宅街」だと認識されている鎌倉地域の高級住宅街エリアをいくつかご紹介します。

JR鎌倉駅の北東エリア~西御門・雪ノ下~

雪ノ下(ゆきのした)と西御門(にしみかど)は、JR鎌倉駅の北東にある高級住宅街です。雪ノ下は小町通りの奥から鶴岡八幡宮一帯のエリアのことをいい、西御門は雪ノ下のさらに北東部に位置しています。西御門の地名は「源頼朝が鎌倉幕府を建てたときに、西門があった地域であること」に由来しています。

JR鎌倉駅とJR北鎌倉の間~扇ガ谷~

扇ガ谷(おうぎがやつ)はJR鎌倉駅とJR北鎌倉駅の間に線路をまたいで広がるエリアに位置しており、鎌倉でトップクラスの地価を誇る高級住宅街です。

JR鎌倉駅の西側エリア~御成町・笹目町・佐助~

御成町(おなりまち)、笹目町(ささめまち)、佐助(さすけ)はJR鎌倉駅の西側にある高級住宅街です。御成町は鎌倉駅の西側一帯に広がるエリアで、かつて御用邸があり皇族が滞在していたことから名が付きました。
笹目町は御成町・佐助・長谷の間に位置するエリアにあり、鎌倉でも一、二を争う高級住宅街です。佐助(さすけ)はJR鎌倉駅の西側エリア、銭洗弁天の近くに位置しています。

鎌倉の高級住宅街の謎

上記でご紹介したように、鎌倉には多くの高級住宅街があります。では、なぜ鎌倉に高級住宅街が多く生まれ、さらに再開発の波などにのまれずに今なお存在し続けられているのでしょうか。鎌倉の高級住宅街の価格相場や、なぜ価格相場が高いままなのかについても詳しくご紹介します。

なぜ鎌倉には高級住宅街が多いのか?

もともと鎌倉は、1889年に横須賀線が開通して都心からの交通利便性が良くなったことをきっかけに、別荘地として発展しました。皇族が利用する鎌倉御用邸が建てられるなど、当時は庶民にはとても手の届かない高級別荘地でした。例えば旧前田侯爵家の別邸は鎌倉市が寄贈を受けて現在でも鎌倉文学館として活用されていますので、ひとたび足を運んでみれば当時の別荘がいかに格調高く豪奢なものであったのかをうかがい知ることができます。

別荘地として発展した鎌倉でしたが、豊かな自然と温暖な気候、歴史の深さなどが人々に愛されて次第に住宅地としても注目されるようになっていきます。「鎌倉文士」という言葉ができるほど多くの文豪が鎌倉に移り住み、そのほかにも多くの著名人や文化人が居を構えたことで、鎌倉は文化の香り漂う街として成熟していったのです。こうした背景のもと、鎌倉は高級住宅街として憧れを抱かれるようになりました。

なぜ鎌倉の高級住宅街は高級住宅街であり続けられるのか?

いくつもの高級住宅街が大規模な再開発もされずに今も高級住宅街として存在し続けている裏には、鎌倉ならではの理由があります。美しい自然のなかに歴史と文化が息づく鎌倉の風景を守るため、住民や行政がさまざまな規制を設けているのです。

現在、鎌倉市では全域の約55.5%にあたる約2.194haが「風致地区」に指定されています。風致地区内では、建築物の高さ・建ぺい率・緑化率などが種別ごとに定められており、その基準を守らなければ新築・改築・増築などの許可がおりません。
さらに、鎌倉市全体の14.5%にあたる573.6ha(東京ドーム122個分)が指定されている「歴史的風土特別保存地区」においては、新築・改築・増築・宅地の造成はもちろん木竹の伐採や建築物の色彩の変更などでさえ、県知事の許可を受けなければ行うことができません。
それに加えて、「1区画を分割して第三者に譲渡することを禁止」など自治体や町内会などで自主的に定めた住民協定も存在しています。そのため、大きな再開発計画などが行われずに、高級住宅街も高級住宅街のままで居続けているというわけです。

鎌倉の高級住宅街の値段相場はどのくらい?なぜ相場が高くなるの?

鎌倉の高級住宅街の値段相場はエリア・広さ・築年数などにもよりますが、200坪以上の物件となると中古の一軒家で1~4億円が目安となります。
住民協定など規制や縛りが多いなかでも相場が高いままなのは、「鎌倉の高級住宅街に住みたい」という需要が供給と比較しても大きいからです。大きな再開発などが行われないため、住宅地の供給が少ないということが、鎌倉の高級住宅街の相場を引き上げているようです。

鎌倉の高級住宅街に住むメリット・デメリット

鎌倉の高級住宅街に住む最大のメリットは、鎌倉の風土と文化がもたらす恩恵と「鎌倉の〇〇に住んでいる」というステイタスにあります。美しい自然、文化の香りがする街並み、閑静で品格のある住宅街に住むという恩恵は何にも代えがたいものです。こうした環境は法的な規制や住民協定などによって守られています。
逆に、価格の高さ、新築や分割分譲などにおける規制の多さといった鎌倉の高級住宅街に住むデメリットも、法的な規制や住民協定などの結果生じているものが多いといえるでしょう。鎌倉の高級住宅街に住むメリットとデメリットは、切っても切れない密接な関係にあるのです。

まとめ

古都鎌倉の高級住宅街は、鎌倉の風土を守ろうとする住民や行政によって環境が良いままに保たれています。今回は鎌倉地域外ということでご紹介しなかった鎌倉山や西鎌倉も、同様に環境が保たれた素晴らしい高級住宅街です。規制の多さはデメリットでもありますが、鎌倉という街がもつ歴史や文化を含めた土地柄に惹かれて移住を考えているのであれば、こうした事情を承知したうえで物件探しをしてみてください。
 

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