近年、老後にマンションを購入する方が増えているのをご存じでしょうか。人生100年時代といわれる現代、老後は2,000万円の蓄えが必要とされる「老後2,000万問題」も波紋を呼んでいます。そんななか、資産形成のひとつとして知られるのがマンション購入です。今回は定年後の物件の購入を考えている方のために、物件購入するときに知っておきたいポイントをご紹介します。
住宅購入と賃貸住宅の比較
そもそもマンションを購入する前に、マンションを購入することと賃貸住宅に住み続けること、どちらが安く済ませることができるのか、気になりますよね。簡単に2つの方法を比べてみましょう。
50年間の総住居費に大きな差はない
例えば、同じような面積で同じような立地のマンションと賃貸住宅を比べたとき、3,000万円の価格のマンションを購入すると固定資産税や管理費などを含めるとトータルで5,000万超はかかります。
一方賃貸住宅は、毎月の家賃が10万円程度かかるとすると50年で5,000万程度かかる計算になり、トータルで見れば払う金額にさほど大きな差はありません。ただしこれはあくまでも家賃が月10万の場合なので、家賃が安いところに住めばマンション購入より多少金額を抑えることもできます。
先に払うか、後に払うか
マンション購入の場合、初期費用に数百万円はかかります。住宅ローンも組めますが、ある程度の現金は用意しておかないとローンの返済に追われることになってしまいます。ただし、ローンの返済さえ終わってしまえば後は管理費などの諸費用のみ支払えば良いので、月々の支払額は年々減っていきます。
一方賃貸住宅は、マンション購入と同様に初期費用として敷金・礼金はかかりますが、4~6ヶ月分となることが大半なので、マンションに比べれば少ない金額になります。ですが、家賃はそこに住んでいる限り支払いが発生しますし、住み替えれば引っ越し費用がさらに嵩みます。住み続けたとしても2年ごとに契約更新料もかかるので、月々の支払いが少なくなることはありません。
若いうちは賃貸、老後は購入がおすすめ
上記の理由から、ずっと賃貸住宅に住むには家賃を支払い続けるだけの稼ぎや貯蓄が必要となります。一方で、若いうちからマンション購入をしたいと思っても、充分な資金が手元にないことが大半でしょう。働いて収入を得られる若いうちは賃貸住宅、まとまった資金ができたら老後のためにマンション購入、という選択肢が理にかなった方法といえるかもしれません。
購入するならマンション?一戸建て?物件選びのポイント
購入するならマンションと一戸建て、どちらが良いのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。
マンション購入のメリット・デメリット
ここでは、マンション購入のメリット・デメリットをご紹介します。
マンション購入のメリット
マンション購入のメリットは、建物を管理会社が管理してくれるという点です。マンションには多くの人が住む以上、共用部が存在します。人の出入りが激しい共用部分はどうしても汚れやすくなりますが、そこの清掃は管理会社が請け負ってくれるので気にかける必要がありません。
住民が多く住んでいるのもメリットのひとつといえます。ご近所同士のコミュニティを形成しやすく、地域の情報も手に入りやすくなります。コミュニティを形成できることは、セキュリティの面でもメリットとなるでしょう。マンションは大半がオートロックで不審者が入りにくいつくりになっていますが、多くの人の目があることも犯罪を未然に防ぐことにつながります。
マンション購入のデメリット
一方で、人が多く住むということはデメリットにもなり得ます。マンションはセキュリティがしっかりしている分、周囲との交流を避けることも可能です。隣に住んでいる人と顔を合わせたこともなければ、何をやっている人なのかもわからない、といった不安を抱える家庭も少なくないようです。
管理会社が建物を維持してくれる分、維持費や管理費が毎月かかるのもデメリットといえるかもしれません。建物を綺麗に維持することは資産価値を高めるので後々自分にもプラスとなって返ってはきますが、一時の支出となるのは痛手と感じるかもしれません。
一戸建て購入のメリット・デメリット
ここでは、一戸建て購入のメリット・デメリットをご紹介します。
一戸建て購入のメリット
一戸建てを購入することのメリットとしては、管理会社がないのでペット飼育などの制約がないことや、隣近所とのトラブルが少ないという点が挙げられます。隣の家庭との距離が縮まり、いざという時に助け合える仲に発展しやすいというのもメリットでしょう。管理費や修繕積立費などの支出がないので、マンション購入に比べて月々の金銭的な負担は少ないといえます。
一戸建て購入のデメリット
デメリットを挙げるとすれば、建物の管理は自分たちでしなければならないという点です。すっかり傷んでから修理を頼んだために、修繕費が嵩んでしまうということもあり得ます。
加えて、セキュリティ面においてはどうしてもマンションに劣るところが多いでしょう。
ちょっと待った!物件購入のリスク
物件を購入するメリットやデメリットを知った上で「やはり物件を購入したい」と思っても、少し待ってください。物件購入にはリスクがあることも知っておきましょう。
ローン返済できない
物件の購入においては、通常のサラリーマンの稼ぎでは一括で支払うことができないケースが多いでしょう。一部は現金で支払い、残りは住宅ローンを組んで、年々返済するのが基本的な方法です。ですが、ローンを返済し続けるには一定の安定した収入が必要になります。もし何らかの事情で収入が減ったりなくなったりすれば返済が滞ってしまいます。いつ何が起こるかわかりませんから、ローン返済ができなくなるリスクがあるということは念頭に置いておきましょう。
初期費用がかかる
前述しましたが、物件の購入には初期費用がかかります。一般的に頭金として物件の価格の1~2割以上、購入諸費用として物件の価格の3~10%を支払う必要があり、合わせると数百万にはなります。それらすべてを住宅ローンで借りてしまうと返済期間が長くなるので、先にある程度支払えるだけの蓄えが必要です。
購入後も払い続ける費用がある
物件は最終的に個人の資産となりますが、購入したからといって支払いがなくなるわけではありません。住宅ローンの返済が続きますし、完済したとしても修繕費や管理費、税金や保険料などがかかります。資産を維持するためにも支払いは続くということを覚えておきましょう。
マンション購入のポイント
さまざまなリスクがあるなかでも、きちんとポイントをおさえておけばマンション購入で失敗する確率は減らすことができます。マンション購入をする上で知っておきたいことを3つご紹介します。
住宅ローンを組むタイミング
一般的な家庭の収入では、マンションの購入に住宅ローンの借り入れは必要不可欠です。住宅ローンを組む上では、タイミングがとても重要になります。住宅ローンは当然誰でも手軽に借りられるわけではなく、審査が必要になります。
ここで大切なのは、ローンを支払う方の勤続年数です。勤続年数が一定以上長いと支払い能力があるとみなされ、金利を安くすることができます。転職前日と転職した後とでは金利に大きな差が出てしまうので、注意しましょう。
納得するまで内覧する
マンションは決して安い買い物ではないので、納得するまで充分に内覧するのがおすすめです。多い人は20件程内覧するといわれており、最低でも5件は内覧すると良いようです。建物の清潔さや部屋の日当たりの良さはもちろん、室内設備の使いやすさやごみ捨て場、駐車場などの周辺環境など、これから自分たちが住むことを想定して内覧しましょう。
家具を入れるときのことを考えて、メジャーを持っていくのも大切です。
信頼できる不動産屋とセカンドオピニオン
多くの人が、マンションの購入は初心者のはずです。大人になれば周りに聞くのをためらうこともあるかもしれませんが、大きな買い物になるので素直にプロの力を借りましょう。信頼できる不動産屋に相談するのが一番ですが、不動産屋を選ぶのに大切なポイントは情報量の多さとサービスの質の高さです。
ひとつの不動産屋のみに頼らず、友人や知人に不動産のプロがいればセカンドオピニオンとして頼るのがベストです。友人や知人であれば自分と同じ目線で見てくれます。第三者の意見を取り入れ、自分にとって最良の選択ができる環境を整えましょう。
まとめ
老後のマンション購入は金銭的な負担を考えると効果的な選択といえますが、住宅ローンの支払いや住環境のリスクなども伴います。それでも資産を持つことの魅力や、家族にとって安心できる環境を整えるという点でもメリットは充分にあるといえます。家族の方や信頼できる不動産のプロとよく話し合い、老後のマンション購入を検討してみてください。